動作分析とは

動作分析とは、作業者の動き(動作)を細かい要素に分解して観察し、ムダな動きや改善できる動きを見つける手法です。IE(インダストリアル・エンジニアリング)の代表的な分析手法の1つで、「どうやって作業しているか」という方法そのものを対象にします。

作業時間を短縮したいとき、多くの現場ではまず「急いでやる」「頑張る」という方向に向かいがちです。動作分析は、そうした精神論ではなく、手を伸ばす距離・持ち替えの回数・体の向きを変える動きなど、動作の中身を変えることで時間と負担を減らすアプローチをとります。

動作分析と時間分析の違い

動作分析とよく一緒に語られるのが時間分析(時間研究)です。両者は対象が異なり、実務では組み合わせて使います。

観点 動作分析 時間分析
対象 作業の「やり方」(動きの中身) 作業の「所要時間」
目的 ムダな動きを見つけて方法を改善する 時間を測り、標準時間・能力を把握する
主な手段 ビデオ観察、サーブリッグ分析、両手動作分析 ストップウォッチ法、既定時間標準法、ワークサンプリング
成果物の例 改善後の作業順序・レイアウト・治工具の配置 標準時間工程別能力表

順序としては、まず動作分析で方法を改善し、そのうえで時間分析で標準時間を設定するのが基本です。ムダが残ったままの作業を測って標準時間にしてしまうと、ムダを含んだ時間が「基準」として固定されてしまいます。

代表的な動作分析の手法

サーブリッグ分析(微動作分析)

手を伸ばす、つかむ、運ぶ、位置を決める、放すといった基本動作の要素に作業を分解し、それぞれが価値を生む動作かどうかを判別する方法です。ギルブレス夫妻が体系化した手法で、「探す」「選ぶ」「迷う」といった要素は、そもそも無くすべき動作として扱われます。部品箱の並べ方を変えるだけで「探す」動作が消える、といった改善につながります。

両手動作分析(左右手分析)

左手と右手の動きを時系列で並べて記録し、片方の手が待っている時間(手待ち)を見つける方法です。片手で押さえながら片手で組み付ける作業では、押さえる側の手が拘束されています。治具で固定できれば両手が使えるようになり、作業時間が下がります。

動作経済の原則

動作を改善するときの考え方の原則です。次の4つの方向で検討します。

  • 動作の数を減らす: 持ち替え・置き直し・探す動作をなくす
  • 動作を同時に行う: 両手を同時に、対称的に使えるようにする
  • 動作の距離を短くする: 部品・治工具を手の届く範囲に配置する
  • 動作を楽にする: 無理な姿勢・力の要る動きを、治具や高さ調整でなくす

ビデオを使った動作分析の進め方5ステップ

作業の撮影、要素動作への分解、ムダの判別、改善案の検討、標準化と教育という動作分析5ステップの流れ図
撮影から標準化・教育までを一連の流れで進める

ステップ1: 対象作業を決めて撮影する

繰り返し回数が多い作業、時間のばらつきが大きい作業、作業者による差が大きい作業を優先します。撮影は手元が見えるアングルで、実際の作業速度のまま行います。速度を落とした実演では、動作の実態が分かりません。

ステップ2: 要素動作に分解する

動画を見ながら、作業を「部品を取る」「治具にセットする」「ボルトを締める」といった要素に区切ります。区切りの単位は、後で改善の対象として扱える粒度にします。細かすぎると分析が終わらず、粗すぎるとムダが見えません。

ステップ3: ムダを判別する

分解した要素を、「価値を生む動作」「必要だが価値を生まない動作(運ぶ・持ち替える)」「不要な動作(探す・迷う・待つ)」に分けます。この判別で、改善の対象が具体的になります。

ステップ4: 改善案を検討する

動作経済の原則に沿って、配置の変更・治具の追加・作業順序の変更を検討します。作業者本人の意見を必ず聞きます。「なぜその動きをしているのか」には、映像だけでは分からない理由(部品の傷つきやすさ、体格差など)があることが多いためです。

ステップ5: 標準化して教育する

改善後のやり方を標準作業として決め、作業手順書に落として教育します。この段階を省くと、改善は提案者の作業だけに留まり、他の作業者には広がりません。

ポイント: 動作分析の目的は、作業者を速く動かすことではありません。速く動かなくても同じ時間でできる方法に変えることです。分析結果を作業者の評価に使うと、以後の撮影協力が得られなくなるため、目的を事前に共有しておくことが欠かせません。

熟練者と新人の比較に使う

動作分析が最も効果を発揮するのは、熟練者と新人の作業を比較する場面です。同じ工程を両者で撮影して要素動作を並べると、時間差がどの動作から生まれているのかが具体的に見えてきます。

多くの場合、差は「1つ1つの動作の速さ」ではなく、不要な動作の有無にあります。新人は部品を探し、確認のために手を止め、持ち替えを繰り返します。熟練者はその動作自体を持ちません。こうして差の正体が動作のレベルで特定できれば、「もっと早く」ではなく「この動作をなくす」という具体的な指導ができます。これは、熟練者の暗黙知を言語化する取り組みとしても機能します。

作業動画×AIで、動作の差を言語化する

動作分析は効果が明確な手法ですが、動画を見ながら要素に分解し、時間を拾い、比較表にまとめる作業には相応の工数がかかります。分析できる人が限られていることも、現場で広がらない理由の1つです。

AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を要素作業に分解し、テキスト・画像付きの作業手順書を自動生成する、製造業向けのAIマニュアル自動生成システムです。熟練者と新人それぞれの作業動画を比較して、差分と改善提案を含む分析レポートを生成する機能があり、動作の違いを言語化する作業を支援します。作業動画からスキルスコアを算出し、ダッシュボードで習熟度を可視化することもできます。

出力はPDF・Excelに対応し、トヨタ生産方式に準拠した標準作業組合せ票のフォーマットでのExcel出力にも対応しているため、分析から標準化・教育までを1本の動画を起点につなげられます。

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まとめ

動作分析は、作業者の動きを要素に分解してムダを見つけるIE手法で、所要時間を測る時間分析とは対象が異なります。実務では動作分析で方法を改善したうえで時間分析を行い、標準時間を設定するのが順序です。サーブリッグ分析・両手動作分析・動作経済の原則を軸に、撮影から要素分解・ムダの判別・改善案の検討・標準化と教育までを進めます。熟練者と新人の比較では、差が「速さ」ではなく「不要な動作の有無」にあることが見えるため、具体的な指導につなげられます。分析と言語化の工数が課題であれば、作業動画とAIの活用もあわせて検討してみてください。