工程別能力表とは

工程別能力表とは、ラインを構成する各工程・各設備が、単位時間あたりどれだけの数量を生産できるか(生産能力)を一覧化した表です。トヨタ生産方式(TPS)で標準作業を定めるときに使う「標準3票」のひとつで、後述する標準作業組合せ票・標準作業票に先立って作成する、いわば土台となる資料です。

工程ごとの能力を数値で並べることで、どの工程がタクトタイムに対して余力があり、どの工程が追いついていない(ネック工程)かがひと目でわかります。ライン編成・設備投資・応援体制の判断は、この工程別能力表を起点に行われます。

ポイント: 「工程能力」という言葉は、品質管理の文脈では工程能力指数(Cp・Cpk)という統計的なばらつきの指標を指すことがあります。本記事で扱う工程別能力表の「能力」は、それとは別物の生産数量に関する能力(1個あたり何秒で作れるか・1日何個作れるか)です。混同しないよう注意してください。

標準3票の中での位置づけ

標準作業を定めるときは、次の3つの帳票をセットで使うのが基本です。工程別能力表は、この中で最初に作成される「能力の棚卸し」にあたります。

帳票 主に見るもの 目的
工程別能力表 工程・設備ごとの生産能力 各工程が1個あたり何秒で加工できるか(能力)を明確にし、タクトタイムに対する余力・不足を把握する
標準作業組合せ票 人と機械の作業の組み合わせ 手作業・自動送り・歩行の時間を時間軸で組み合わせ、1サイクルがタクトタイム内に収まるか検証する
標準作業票 作業者の動線とレイアウト 設備配置図の中に作業順序・動線・標準手持ちを描き、現場に掲示する

工程別能力表で「各設備がどれだけ作れるか」を押さえたうえで、標準作業組合せ票で「人と機械の時間の組み合わせ」を設計し、標準作業票で「現場での動線」を可視化する――という順序で標準作業ができあがっていきます。

生産能力の計算方法

工程別能力表で使う生産能力は、次の考え方で計算します。段取り(品種切り替え等)が発生する工程では、段取時間も能力に織り込みます。

工程の生産能力(個/日) = (1日の稼働時間 − 段取時間の合計) ÷ 1個あたりの正味加工時間

具体的な数値で見てみましょう。ある工程の1日の稼働時間が27,000秒、1個あたりの正味加工時間が25秒、1日の段取り替えに1回30分(1,800秒)かかるとします。

(27,000秒 − 1,800秒)÷ 25秒 = 1,008個

つまりこの工程の生産能力は1日1,008個です。仮にこの工程のタクトタイムが30秒(1日あたり必要数900個)だとすると、能力1,008個に対して必要数は900個なので、余力がある工程と判定できます。逆に能力が必要数を下回っていれば、その工程がライン全体のネックになります。

ポイント: 段取時間を能力の計算に含め忘れると、実態より能力を高く見積もってしまいます。特に多品種少量生産のラインでは、段取り替えの頻度・時間がボトルネックの正体であることが多いため、段取時間の実測を省略しないことが大切です。

工程別能力表の作り方4ステップ

ステップ1: 対象工程・設備を洗い出す

ラインを構成する工程・設備をすべて書き出します。人が行う工程だけでなく、自動機・検査機など機械が加工する工程も対象に含めます。工程が多い場合は、まず主要工程から着手し、範囲を広げていくのが現実的です。

ステップ2: 加工時間・段取時間を測定する

工程ごとに、1個あたりの正味加工時間と、段取り替えにかかる時間・頻度を実測します。ここでの測定は、後述する標準作業組合せ票の「要素作業ごとの時間観測」と共通する作業のため、あわせて実施すると効率的です。

ステップ3: 生産能力を計算する

前章の計算式にあてはめて、工程ごとの生産能力(個/日、または個/時間)を算出します。設備が複数台ある工程は、台数分の能力を合算します。

ステップ4: タクトタイムと比較し、ネック工程を洗い出す

工程ごとの能力と、ラインの必要数(タクトタイムから逆算した必要生産数)を並べ、余力・不足を一覧化します。次のような表にまとめると、ネック工程がひと目でわかります。

工程 正味加工時間 能力(個/日) 必要数(個/日) 判定
組立A 25秒 1,008個 900個 余力あり
溶接 32秒 780個 900個 ネック工程
外観検査 20秒 1,260個 900個 余力あり

この例では溶接工程の能力(780個)が必要数(900個)を下回っており、ライン全体のネックになっています。改善の優先順位は、まずこのネック工程に向けるのが定石です。

組立A(1,008個)・溶接(780個)・外観検査(1,260個)の生産能力を、必要数900個/日の破線と比較した棒グラフ。溶接だけが必要数を下回りネック工程になっている。
上表を図にしたもの。溶接工程だけが必要数(900個/日)の線に届かず、ネック工程になっている。

Excelでの記載項目

工程別能力表をExcel等で作成する場合、一般的に次の項目で構成します。

  • 基本情報: 品名・工程名・設備名・作成者・作成日
  • 正味加工時間: 1個あたりの加工にかかる時間
  • 段取時間・段取回数: 品種切り替え等にかかる時間と1日の発生回数
  • 稼働時間: 休憩・計画停止を除いた1日の正味稼働時間
  • 生産能力: 計算式で算出した1日(または1時間)あたりの生産可能数
  • 必要数・余力率: タクトタイムから逆算した必要数と、能力に対する余力の割合

作成・更新でつまずきやすいポイント

工程別能力表は、作った直後は実態を反映していても、次のような理由で古くなりがちです。

  • 段取時間の測定が抜ける: 加工時間だけを測って段取時間を見落とすと、能力を過大評価してしまう
  • ロットサイズの変動で能力が変わる: 段取り回数はロットサイズに左右されるため、生産計画が変わると能力も変わる
  • 設備改善後に更新されない: チョコ停対策・治具改善で正味加工時間が変わっても、能力表側の数値が古いまま放置される

ポイント: 工程別能力表は「一度作って終わり」ではなく、設備・段取り・生産計画が変わるたびに見直す帳票です。標準作業組合せ票・標準作業票とあわせて、3票の整合性を保つ運用ルールを決めておくと形骸化を防げます。

作業動画×AIで時間観測の負担を減らす

工程別能力表・標準作業組合せ票づくりで共通して手間がかかるのが、各工程の正味加工時間・段取時間を現場で観測する作業です。ストップウォッチでの計測は、複数サイクル・複数工程分をこなすとかなりの工数になります。

AI Manual Coachは、作業動画をアップロードするだけでAIが工程を解析し、要素作業への分解と手順の言語化を自動で行う、製造業向けのAIマニュアル自動生成システムです。動画を撮っておけば、後から何度でも見返して時間を数え直せるため、工程別能力表づくりの土台となる時間観測のやり直しが利きやすくなります。

注意: AIがExcelフォーマットで自動出力できるのは、標準作業組合せ票(トヨタ生産方式に準拠したフォーマット)です。工程別能力表そのものを自動で作成・出力する機能ではありません。工程別能力表づくりにおいては、時間観測の手間を動画とAIの解析で軽くする、という位置づけで活用してください。

ネック工程を見つける時間観測を、作業動画で楽にする

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まとめ

工程別能力表は、各工程・各設備の生産能力を(稼働時間−段取時間)÷正味加工時間で計算し、タクトタイムと比較することでネック工程を見つけるための帳票です。標準3票の中では最初の土台にあたり、この上に標準作業組合せ票・標準作業票を積み重ねて標準作業ができあがります。段取時間の測定漏れや設備改善後の更新忘れで形骸化しやすいため、3票の整合性を保つ運用ルールを決めておくことが大切です。時間観測に工数がかかっている場合は、作業動画を撮っておき、AIによる解析で見返しやすくするという選択肢もあわせて検討してみてください。